大阪大学大学院工学研究科の齋藤彰准教授、山下和真大学院生らの研究グループは、表面の微細構造を工夫することで明るく広角に光が届く新しい採光窓を発案した。南米原産のモルフォ蝶の羽の構造を応用したもので、シミュレーションで有効性を実証している。
採光窓は光が直進すると部分的にしか光が当たらず、天井側など暗い場所が発生する。光を散乱させると全体に暗くなるほか、光を曲げると虹色が発生したり、大型の設備が必要になったりしていた。
そこで、研究グループはモルフォ蝶の羽の微細構造が光を広角に広げ、色の偏りを防いだ結果、宝石のように青く輝いている点に着目、モルフォ蝶の羽が持つ光の特異な反射特性を光の透過に応用して理想的な採光窓を発案した。
この構造を電磁場シミュレーションで検証したところ、モルフォ蝶の羽と同じ結果を得られることが明らかになった。この機能を活用することで天井側まで明るい採光窓や、各種照明に役立つ光拡散板、光の透過性と拡散性に優れたビニールハウスなどの開発に応用が期待できる。
モルフォ蝶のツリーのような層になった構造が反射することでブルーに見える。
この層の部分を無くし、表面の凹凸の部分を採用することで、透明な透過に応用できた。これにより、光を90度まで拡散できようになった。

https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2021/20210501_1
モルフォ蝶は生きた化石ともいわれる南米産の蝶で、羽が青く輝くことで知られている。その発色は物理学的に矛盾しており、表面の微細構造が影響している。
◉モルフォ蝶
南米に産し、生きた宝石とも呼ばれる青く輝く蝶。世界一美しい蝶と言われている。その発色は一見、物理学的に矛盾し、シャボン玉と同じ光干渉なのに虹色でなく、広角で青い。その秘密は、乱雑さを含むナノ構造にある。

出典:unsplash
レクサスの塗料でもこの構造を使い深みのある美しいブルーを再現している。


https://lexus.jp/models/lc/features/sesb/#tab_blue
このようなバイオミメティイクス(生物模倣)の研究は、課題を解決するテクノロジーだけではなく、美しさや豊かさをも作り出す。
◉バイオミメティクス
生物の構造や機能、生産プロセスを観察、分析し、そこから着想を得て新しい技術の開発や物造りに活かす科学技術