グラスファイバーと樹脂の糸によって、繭のような繊細なフォルムを成型した「MAYUHANA」。
柔らかく独創的な光の表情は、今までにない魅力ある空間を創造する。デザインは世界的建築家、伊東豊雄氏。
日本らしさを内包するデザインだと思う。
3重の繭。中央のランプが放射する柔らかな光が、セードの美しいグラデーションを作る。

繭から糸を紡ぐように型に糸を巻きながら作られている。この照明に使用されているパーツの1つ1つ専用にデザインしており、伊東豊雄氏のこだわりを感じる。素材はグラスファイバーと樹脂でできていて、触ると弾力があり、その糸の隙間からこぼれる光は幻想的。
このMAYUHANAがうちにやってきたのは、10年以上前。友人からの結婚祝いだった。嬉しそうに友人が、直径500mmの大きなMAYUHANAを持ってきてくれた時には、うちにはとても大きくて置く場所ないけどどうしよう。と思ったが、、、これが、全く圧迫感がない。
MAYUHANAのフロアランプ(テーブルランプ)には2種類のサイズがあって、430mm(2重の繭)と500mm(3重)がある。ちょっと大きいかな?と思っても3重の方が格段に美しい。
それは籠のような抜けのある織りと丸さで、消灯していても存在感を消す。点灯している時は、内側からじんわりと光る柔らかさで、そっと光り、どこか奥ゆかしい美しさを感じる。
デザインといえばヨーロッパだ!と、ヨーロッパの流行を追ったり、真似ばかりしてしまう私たち日本人。確かに彼らは美しい街を守り、育ち、芸術に囲まれ育っていて、リテラシーが高いのは間違いない。
美しいものや美しいものへの価値観を守ってこなかった日本は、せいぜいヨーロッパの真似をするくらいしかできないだろう。
しかし、今も僅かに残る日本の美しさや感性を辿っていけば、このようなシンプルだが繊細で美しい表現ができるのは、日本ならではないかと思う。いや、思いたい。
MAYUHANAは、そんな日本らしさを内包しながら、プロダクトとして成立している数少ない照明だと思う。

◉伊東豊雄
伊東豊雄は革新的なコンセプトの建築で世界的な評価を受ける、日本の建築家。伊東氏の建築は現実と仮想のイメージを融合するような独創性で知られており、現代の「シミュレートされた都市」への実践は、論文「Architecture in a Simulated City」にもまとめられている。
2013年には「建築界のノーベル賞」とも言われるプリツカー賞を受賞。国際的に最も大きな影響力を持つ建築家の一人として、現在も活躍している。
ミラノで開催された「Yamagiwa Lighting Design 2007」で発表された照明「MAYUHANA」は、YAMAGIWAの代表的な照明の一つ。グラスファイバーでつむがれた、繭のようなセードからこぼれる明かりは幻想的で、伊東氏の建築と同じように仮想が現実に現れたような印象がある。